診療室のひとりごと
こんにちは!院長の倉田です。
もう随分前になりますが、私が訪問診療を始めて少し経った頃のエピソードです。
私は、当時から、嚙み合わせのバランスによって全身の健康状態に影響を与えることについて勉強していました。
訪問先の施設で日中入れ歯なしで生活する方が多くて、どうお伝えするべきか悩んでいました。
ある80代の女性は歯は全くなく、入れ歯もないため、食事の形態を食べやすいものに変えて生活されていました。
重度の認知症があり、入れ歯を新しく作ろうにもその為に必要な型取りも難しいかもしれない(>_<)
でも、どうしても入れ歯を入れて食べる楽しみも味わってほしいと思い、ご家族へ相談したところ、
本人が嫌がらないなら、是非とも作ってほしいとのこと。
入れ歯なしで食べるせいで、上あごにやけどしたり、粘膜の異常があったりするため、診ていた方でした。
なかなかお口を開けて頂くことも難しい方だったのですが、ご希望に添えるように型取りをしてみることにしました。
「ニッコリ笑って食べて欲しいから、頑張って型取りしましょう。」
発語はないものの、いつにない笑顔です。
は~い大きく開けて~ 今までになく大きな口を開けてくれます。
入れ歯作製には、行程があり、嚙み合わせをみたり、仮にろうで並べた歯並びをみたり、期間がかかりますが、出来ないかもしれない?という不安が噓のようにスムーズに入れ歯を作ることができました。
入れ歯完成の日、意思の疎通は難しいので、嚙み合わせや歯ぐきへの当たり具合を入念にチェックします。
これで食べてくれるかな?
翌週の診療日、車椅子で来られたら、ニコニコで入れ歯を入れて下さっていました!(^^)!
嬉しい(*^^)v
「使ってくれたの?嬉しい。痛いところなかった?」
入れ歯を入れて食事をしてみることで口の中が少し傷ついたりするので、調整をすべき場所がわかりやすくなります。
でも、傷はありません。施設の職員さんに聞いたところ、長年入れ歯なしで生活されていたので、食べるときは外されていたそうです。
しかしながら、食べ終えるとすぐに入れ歯を入れたいと言われ、食べる時間と寝る時間以外は入れ歯ありで生活されて、ご家族の面会時にも、自慢げにされていたそうです。
特に私が診療に伺う日には、早く入れたいとせがまれたそうです。
食べるために入れ歯を使って欲しかったですが、日中入れ歯を入れることで、唾液が出やすくなり、感染予防になったりします。笑顔も大切です。
それからの診療日には、いつもニコニコで来てくれていました。
今どうされているのだろう?
患者様の笑顔は私たち歯科医師の目標なので、このおばあちゃんのような経験は大切な宝ものです。
昨日の福岡の空は、幻想的な秋空でした。
冷え込む季節になりましたので、皆さんお身体ご自愛ください。
歯科衛生士を引き続き募集中です。どうぞよろしくお願い致します。
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