ショックの経験ありますか?
こんにちは!院長の倉田です。
今日は私の学生時代の面白いエピソードです。
歯学部の学生は、5年生になると、臨床実習が始まります。
講義や模型での実習をした後、直接患者様と接することになります。
私の場合は、総合診療科というところからスタートでした。
治療をするというよりも、患者様のお痛みや状態を確認して、どこの科が良いのか、判断するところです。そこで応急処置をした後、専門外来へつなぐ役目がありました。
当時の私の大学では、患者様の持病、今までのご病気などを詳しく問診していました。
歯科治療をこれからしていくために、とても大切なことで、指導医の先生の前に学生が詳しく聞くのです。
主訴は何か?最初に聞いて、あとは持病やアレルギーなどを聞きます。
私が初めて担当した患者様は70代前半の女性でした。
一通り聞いた後、私はこう聞きました。
「今までにアレルギーなどでショック状態になったことはありますか?」
「ショックね~、そういえばあるかもしれないなあ。」
「え、ショックの経験があるんですか?」
薬などにアレルギーがあり、ましてショックの既往があるのなら大変です。抜歯をする場合にも使える薬が限られることを私は講義で学んでいたからです。私は慌てて話をさらに聞きます。
「〇〇さん、もっとくわしくその時のことを教えてください。」
「そうね、私は自分のことをわりと強いほうだと思っていたけれど、あの時は、そう主人が急に亡くなった時にはショックで寝込んでしまったのよね」
え?それ?そのショックじゃないかも?私が困って指導医の先生を見ると、笑いをこらえながら、ちゃんと聞いてやれと手で合図しています。
「お薬のアレルギーなどのアナフィラキシーショックとかではないのですね?」
「うん、そうなんだけど、私の人生で一番ショックなことだったの。」
それから、止まらなくなり、旦那様が亡くなられた経緯や、その時の辛さなど、機関銃のように話されて止めることもできなくなったのです。
また、指導医のほうをみると、ただうなずいているだけ。
ひとしきり話された患者様は、深呼吸されたあとこうおっしゃいました。
「主人が亡くなってから、辛くて身体も歯もあちこち痛くて、歯科大を紹介してもらったのだけど、話を聞いてもらったらすごく楽になって、どこが痛いのかわからない。」
指導医に代わり、歯周病の治療だけして、また痛いところを教えてもらうように説明されていました。
後から指導医の先生に呼ばれて言われました。
「患者様はいろいろな悩みを抱えているから、聞き方次第では今日のようなことになる。忙しいと痛みを癒すほど話を聞いてやることはできなくなるが、話も聞かずただ歯の治療だけするような歯科医師にはなるな。」
私は大学時代の笑い話として、この患者様と指導医の先生のこの言葉は今も大切にしています。
歯科医師はお口の中だけ見ていれば良いというわけではありません。
説明して納得して頂きその治療を行っていきます。
先日とても綺麗な夕日に出会えました(#^.^#)